「帰ろうか、うる」
真っ先に声をかけてくれる麗日に、こくりと頷く。
人目なんて気にせずにわたしの髪を撫でて歩く彼の手つきには、もう慣れてしまっていることに気付く。
隣を歩くのも当たり前になっていて、麗日は自然と笑いかけてくれる。
「あー腹減った。今日は買い物面倒だからデリバリーでいい?」
「……うん、もちろん」
「ん。じゃあうるが好きそうなもの適当に頼んどくわ」
自分が好きなものを頼まないところが麗日らしい。
どこまでもわたし優先で考えてくれる彼の手に、そっと自分の手を重ねた。
「今日は大胆な日?」
くつくつと喉を鳴らして笑う麗日に、そっぽを向いて否定する。
「ちが、う……なんとなく」
「なんとなくで手繋いじゃうんだ?」
「だって……無意識、だったから」
「ふはっ、かわい」
応えるようにぎゅっと握り返してくれる麗日に心が温まる。
「なに頼もうかな」と思案している麗日とエレベーターに向かいながら、そっと彼を見上げると、今日も麗日は美しかった。



