Hush night


「……ご、めんね」



自分でもどうして謝ったのかはわからない。

心の奥底に渦巻く恐怖が、意味のない謝罪を生んだのかもしれない。



そっと麗日の右手に触れると、綺麗な肌が哀しい赤に染まっていた。

大きな手が、痛々しい。



「なんでうるが謝るんだよ」



可笑しそうにふっと笑みをこぼし、麗日は慈愛の瞳を向けてくる。


自分の傷より麗日の傷の方が、ずっと大きな痛みを覚えた。


大切な人が傷つく所は見たくない。



「わからない、けど……ごめんね、」



彼の目を見れず、ただ赤く腫れた手を撫でる。

危険に塗れているのにも関わらず美しく麗しい彼を、愛しいと思った。




「うるが抱きしめてくれたら、痛みなんか飛んでく」



わたしの表情があまりにも暗かったのか、麗日はそう言って空気を明るくしてくれる。

その配慮が優しくて申し訳ない。


素直になれなくて、いつものようにふいっと目を逸らしてしまう。



「また……そんなこと言う」

「だって本当のことだし」


「揶揄ってるでしょ……」

「どこがだよ」



くつくつと喉で笑いながら、麗日は首を傾げてわたしをじっと見つめてくる。

その瞳は透き通っているのに、うんと奥が深い漆黒の色だった。