Hush night


その手招きしている彼の手の違和感に気付く。


「……手、怪我、してる」



彼の手の甲に、昨日まではなかった痛々しい傷が増えていた。

もしかしたら人を殴ったのかもしれない。


赤く腫れており、少し血が出た後なのだろうと憶測を立てる。



……さっきまで何を、していたんだろう。


急に目の前の彼が違う人に思えて、理由なんて聞けるはずない。

ただ呆然と言うわたしに、麗日は自分の右手を一瞥して口を開いた。



「あー……嫌なもん見せた」

「大丈夫……?」


「全然平気。久々すぎて鈍ってただけ」



そう言う麗日は軽くあくびをする。


本当に何もなかったかのような平然とした態度に、逆に不安が募っていく。