Hush night


「……うん」



わたしは麗日に、幾つ嘘を付けば気が済むのだろう。

どうすれば、彼のことを傷つけないでいられるのだろう。


考えれば考えるほど、苦しかった。


ただ何も考えたくなくて。

勇気を振り絞ってくるりと彼の方を向き、正面から麗日に抱きついた。



「不意打ちは狡いって」



困ったようにわたしの頭を撫でてくれる彼の温かさが身に染みる。

やっぱり麗日の腕の中は心地良いな……と思っていると、彼はわたしの髪に触れながら言った。



「俺は、何があってもうるから離れる気ねえよ」



真っ直ぐな言葉が胸に刺さる。


麗日はわたしに嘘など付かない人間だと、彼と知り合って1ヶ月弱なのに分かってしまう自分が嫌だった。

彼の言葉に、素直に返せない自分も。



何も言えずにこくりと頷けば、麗日は少し身体を離してわたしの顔を覗き込んだ。



「なんて顔してんだよ」



必死に涙を堪えている表情を見られ、ぱっと顔を隠す。


どうしてこんなに、麗日はわたしのことを受け入れてくれるのだろうか。

温かい腕の中で抱きしめてくれるのだろうか。



いつか麗日自らわたしから離れる日が来ることが確実なのは、わたししか知らないこと。

そんなことあり得ないと、当たり前のように言ってくれる彼の優しさに、気を抜けば涙が落ちてしまいそうだった。