闇に包まれた繁華街のど真ん中。
視線を感じるのは気のせいではないはずで、それは彼も同じであるのに。
急に目の前が暗くなったと思ったら、後頭部を押さえられ、グッと引き寄せられた。
「……っん、」
彼と唇が……重なっていて。
甘い、苦しい気持ちに苛まれる。
……頭が回らない。
どうしてこんなことするの。そう聞きたいのに。
ふわふわと途切れそうになる意識。
彼の仄めかす煙草の苦い味が、わたしを支配した。
……こんなところで、
しかも、なんでこんな────
「従順、か」
朦朧とする意識の中、唇が呆気なく離されて、彼は煙草をジリジリと地面で潰す。
そうして【レイ】は、糖分補給用に含んだ棒つきキャンディを含み、それが……
────ガリッ、と音を立てて崩れた。
「ゆっくりおやすみ、捨て猫ちゃん」
彼が、わたしの頬を優しく撫でた気がした。



