Hush night



「うるちゃんって誰かに似てんなーって思ったら、うちの羽結(はゆ)さんに雰囲気そっくりだわ」

「……?」



だれだろう、と首を傾げると、京さんは甘いマスクで微笑んだ。



「あ、羽結さんは俺のオンナ」



にこにことそう言う京さんは本当に掴めない。

けれど、彼女さんのことを愛しているのは一目瞭然で、少し柔らかい表情になったように思う。



「いつか会わせてあげる。うるちゃん、羽結さんと仲良くなれそうだし」



“いつか”の約束は、儚くて頼りない。

その“いつか”が来るのかわからないわたしは、弱い笑みで返す他なかった。



「……楽しみに、してます」

「ん、そうして。じゃー俺そろそろ行くわ」



挨拶もそこそこに帰っていく京さん。

麗日に「適当な奴」と悪態を吐かれていたのを気づいていたはずだけれど、変わらず飄々と去っていった。