湊月くんの甘い溺愛に困っています

「そうだよ。あれは俺が夢に対して言った台詞だ。相手が夢なら自然に気持ちを言葉に出来る。撮影現場に夢が居てくれたから俺は自然な演技をすることが出来たんだ」


あの日の覚醒は本当に一瞬のことだった。短い時間で役を自分のものにした湊月くんは本当に凄くて、別人に思えるほど。

それがきっかけとなって、新しい才能が開花した瞬間だったんだ。

プロでも認める湊月くんの演技。もしオーディションに受かることが出来たのならどんな影響を彼に与えるのか。

気になるものの、それを決めるのは湊月くん自身だ。



「それを聞いて、ますます湊月さんを業界に引きずり込みたくなった。湊月さんなら、大人気間違いなし。俺のいいライバルになると思うな」



まただ。白石様が見せる薄暗い笑顔。前に比べて冷たい感情は感じられないけど……あれは湊月くんに対する笑みだったのだと確信することができた。

それにどこか楽しそう。冷たく感情なんてこもってないと思っていたけど今はうっすらと喜びを得ているような。

白石様、もしかして同等に競えあえるライバルが欲しかったんじゃ。湊月くんの演技を見て、実際に話してみて好奇心を高めらせた。




「……考えさせてくれ。今はいい答えが思い浮かばない」

「いいですよ。これ、俺のIDです。何かあればここに」


スマホのIDを登録し、白石様は洋食屋さんを出て仕事へと向かった。