拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

「棘で肌を傷つけないように、むしろ袖は下ろしておいた方がいいです」
 私は足を止めて振り向いたファルザード様の腕をそのまま自分の方に引き寄せると、二の腕まで捲り上げられたシャツの袖を手早く下ろしていく。
 最後に袖口のボタンを留めつけてから、彼の腕を解放した。
「はい。もう大丈夫です」
 これでひと安心だとホッとして顔を上げたら、私を注視するアメジストの瞳とぶつかった。ここで初めて、自分の取った行動がいかに無作法なものだったかに思い至って青くなった。
「す、すみません! つい、いつもミリアたちを相手にしているのと同じ感覚で動いてしまって。不躾に触れて、ごめんなさい」
 相手はミリアではなく大人の男性なのだ。その肌に断りもなく触れるなど普通にあり得ないし、貴族社会で考えれば論外だ。
 手を出す前に、口でひと言伝えればそれでよかったのに……!