拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 さらにどういう風の吹き回しか、大抵の物事には動じないザイオンが一目散に俺の横にやって来て窓枠に乗り上がる。そのまま噛り付くように雷が落ちていった方角を見つめているではないか。
『ニャー《あれはおそらく……いや、我にもまだ確たることは分からん》』
 いつになく興奮気味のザイオンを怪訝に思いながら尋ねたら、なぜかお茶を濁された。
 ……おかしな奴だ。普段はなにかあれば俺が聞かずとも、余計なことまで細かに教えてこようとするくせに。
 俺はあえてそれ以上追求せず、再び目線を窓の外に移す。
 するとどうしたことか。これまでの荒天が嘘のように、雨風が落ち着き始めているではないか。
「ほう。珍しいこともあるものだ」
 見る間に好天へと転じていく空をザイオンとともに眺めながら、俺の中でこれから新たになにかが動きだす。不思議と、そんな予感を覚えた──。

 春の嵐が吹き荒れたあの日から五週間が過ぎ、季節は晩春に差しかかっていた。暖かな陽気に誘われて今が盛りと春の花々が咲き誇る。