拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 そんなふうに我武者羅に日々を過ごしていれば、月日が経つのはあっという間だった。気がつけばあれから十三年、十四歳だった俺は二十七歳になっていた。
 おもむろに視線を窓に向ける。
「それにしても、ひどい雨と風だ」
 窓の外は、十三年前を彷彿とさせるような春の嵐が吹き荒れていた。吸い寄せられるように寝台を下り、窓前に足を進める。
 俺は実用的な筋肉がついた百九十センチを越す長身を屈め、腰高窓から荒れ狂う空を仰ぎ見た。
 その時。ひと際大きな雷鳴とともに激しい光が空を駆け、大地にぶち当たって弾ける。
 直視しがたいほどの強烈な閃光に、反射的に瞼を閉じた。
「っ、落雷か! かなり近いな……被害がなければいいが」
『ニャーッ《違う! 今のは落雷などではない!》』
 寝台で微睡んでいたはずのザイオンから、いきなり語気強く否定の言葉が返ったことに驚く。
「おいおい。今のが雷でなくてなんだというんだ?」