ティーナが問いかけると、鉄格子の向こう側で簡素な囚人服を身にまとい、粗末な寝台に腰掛けていた女──ティーナの姉のマリエンヌがピクリと肩を揺らし、俯いていた顔を上げた。
 シリジャナの新皇帝、ヘサームから『即位祝いです』と縁起でもない発言と共に、マリエンヌの身柄が我が国に強制送還されたのは、ほんの数日前のことだ。
 マリエンヌは能面のような無表情でティーナの頭から足先までを見やる。最後に視線をティーナの膨らみかけた腹部のあたりに留め、小さく呟く。
「私は遅きに失したのね。もっと早く動くべきだった……そう、たとえばあなたがまだお母様のお腹の中にいるうちに」
 耳にした不穏な台詞に、俺の眉間に皺が寄る。
 ティーナはうまく聞き取れなかったようで、首を傾げている。するとここで、マリエンヌがティーナに向かい、この場に不釣り合いな笑みを浮かべた。