拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 問いかけるが、なぜか口をパクパクさせるばかりで答えない。
 なんだ? さては、さっきの匂いでよほど空腹を刺激されたと見える。さして気にせず、そのまま足を進めた。
 感染対策というよりは、診療所という場所柄だろう。辿り着いた正面玄関の扉は開放されていたが、入ってすぐの受付に人の姿はなかった。
「ごめんください。少し話を伺いたく、入らせてもらってもいいだろうか?」
 中に向けて声を張れば、それを聞きつけて奥から人がパタパタと小走りでやって来る。
「はーい! 今行きますのでお待ちください」
 なっ!? その声を耳にした瞬間、全身の体温が上がり、意識のすべてが声のした方向に集中する。
「すみません、お待たせして。ここは今、新規の患者さんの受け入れを中止しているので、職員もみんな奥で──」
 目と目が合うと、俺の聖女は瞳がこぼれ落ちそうなくらい目を見開き、次いでふわりと微笑む。