カロンはギョッと目を見開いて、そのまましばらく固まっていたが、やがてフッと口角を緩ませた。
「ヘンな女」
 ボソッとこぼし、ドサッと座席の背もたれに寄りかかる。そのまま足を組むと、寛いだ様子で目を閉じた。
 ……あら? ここまで一瞬だって目を離すまいという意気で、ずっと監視していたのに。
 そこから〝死の館〟到着までの二日間、カロンは道程に無理がないか、私ばかりかラーラのことまで気遣う細やかさを見せた。加えて食事や身の回りなど、なにくれとなく世話を焼いた。それこそ、こちらが恐縮してしまうほどに。
 こうして予想外に快適な馬車旅を経て、王都出発から三日目。私たちは王国北のふたつの町の境に打ち捨てられたように建つ〝死の館〟に辿り着いたのだった。