拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

「かまわん。もともと今回はグレンバラ公爵として正式に現地に出向き、対策の指揮を執る予定だった。その道中、王都で名を明かすことになったからと、咎められるいわれはない」
「公爵としての今日のお姿、とてもお似合いです。ひと目見て、素敵すぎて思わず息が止まってしまいました」
「なんと! 君が気に入ってくれたのなら、肩が凝る盛装も悪くないな」
 白い歯をこぼして笑う彼の笑顔のまぶしさに目を細めた。
 もっと他に話したいことや伝えたいことがあったような気もするが、こんなふうに取り留めのない話をしているうちに、彼の帯同者が待つ馬車の前まで辿り着いてしまった。
「ファルザード様、お気をつけて」
「いってくる。君も達者で」
 互いに見つめ合い、頷き合った。そうしてファルザード様はマントを翻し、颯爽と馬車に乗り込んでいく。
 馬車が進みはじめ、車体が完全に見えなくなっても、私はしばらくその場に立ち尽くし凛々しい彼の残像を思い返していた。
 ……ファルザード様、どうかご無事で。