拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 先ほどの男性の行動を容認することは絶対にないが、『そんな萎れた花を買うわけない』という言葉はきっと大衆の真意だろう。
 私がなんと答えたものかと思案していると、ふいに少女のワンピースの膝のあたりに血が滲んでいるのに気づく。
「まぁ! 膝を怪我したのね? 急いで手当てをしなくっちゃ」
「えー? こんなのほっといたってじきに治るよ」
「いいえ。ばい菌が入ってしまうかもしれないから、ちゃんと手当てしないといけないわ。それと、親御さんに花が駄目になってしまった事情を説明する必要があるのでしょう? 家まで送っていくわ。おうちはどっち?」
 私の質問に少女はコテンと首を傾げた。
「おうちというか……まぁ、住んでいるのはあっちだけど」
 少女はメーン通りから外れた細い道の先を示した。その道は舗装がされておらず、道の先に広がる区域も寂れた印象だった。
「そう。荷物を取ってくるから、ちょっと待っていて」