拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 すぐ横で呻き声があがり、反射的に目を向けると、拘束を解かれた男性が地面に蹲っていた。なぜかファルザード様に捻られていた腕ではなく、脛をさすっていた。
 男性が、しきりに脛を気にしながら不貞腐れ気味にこぼす。
「だがよ、そうは言ったって、こっちだって生活がかかってんだ。こいつらがうろちょろしてるのが熱病蔓延の原因だって聞かされちゃ、黙ってらんなくて……」
「なるほど。つまらん噂話に踊らされ、女性を脅すのがお前の流儀か。見下げたな」
「っ!」
 男性は返す言葉がないようで、唇を引き結んで気まずそうに俯いた。
「だが、発症の経緯や原因、今後の方針をろくに説明せぬまま民の不審を募らせた政治の責任は大きい。その点は謝罪しよう。その上で、さらなる感染拡大の防止のためには国民の協力が不可欠だ。国のためでも王家のためでもなく、あなた方自身やその家族、日々の暮らしを守るために、これから国が示す政策に協力を願いたい」
 ファルザード様の言葉に、いつの間にかかなりの人数に膨れ上がっていた人垣がざわついた。