帰宅した屋敷では、お母様と使用人たちが、お姉様の衣装やら馬車の手配やらで慌ただしくしていた。使用人のひとりを捕まえて仔細を聞けば、急遽王太子殿下主催の晩餐会が催されることになったらしく、その席にお姉様が向かうという。
 なんとエイムズ卿は、昨日の今日で殿下に開催を承諾させたようだ。見合いという目的を伏せて開催に漕ぎつけたにしても、こんなに早急に席を設けたのは卿の手腕によるところ。卿に舌を巻くと同時に、私は夕食の場でお姉様と顔を合わせなくて済むことに、内心でホッとしていた。
 お姉様の頑なな態度も私を心配してくれているからこそ。だから、私の気持ちをちゃんと伝えていけばいつかは分かってくれるとは思うのだ。それでも、厳しくあたられた昨夜を思い出せば、対峙するのがまだ怖くもあり。夕食の席のお姉様の不在は、正直ありがたかった。
 そんなことを悶々と考える私の様子を、ラーラが腕の中から物言いたげに見つめていた。