『ニャー《とはいえ、わざわざ当のシェルフォード侯爵を外し、緊急招集した議会で承認を強行している。さすがのそなたも、事前にこれを察知して止めるのは難しかったろうよ》』
 フォローとも慰めともつかないザイオンの台詞が、今は虚しく響くばかりだ。
『ニャー《して、これからどうするつもりだ?》』
 俺自身、決めかねていた。
 実は、ヘサームの報告では今日にも国民に向けて婚約発表されるだろうということだった。俺はこれを阻止すべく、昨晩のうちにある男と接触を持った。
 その男とは亡き父の忠臣で、今は叔父に仕える王国最後の良心、エイムズ卿だ。彼は己のためでも王のためでもなく、国のために身命を賭する男。なんとか彼を説得し、この婚姻話を止めさせようとしたのだが……。
「どんな思惑があってのことかまでは分からんが、エイムズ卿は俺に対して公表延期を明言した。彼を信じ、状況を注視していく」
 口ではそう答えながら、もしもの時は彼女の身柄を預かる心づもりがあった。