叔父の呼び出しから三日目、俺はヘサームを振り切るようにして対策協議で缶詰状態だった屋敷を飛び出し、シェルフォード侯爵邸へと向かっていた。この時間に行けば、ちょうど孤児院に向かうティーナと合流できるだろう。
 昨日の夕刻にヘサームから受けた驚愕の報告と、その対応のせいで一睡もできぬまま朝を迎えていた。こうしてティーナのもとに向かっている今も、気ばかりが逸って仕方ない。
『ニャー《そういきり立つな。そなたがじたばたしたところで状況は変わらんぞ》』
「そんなことは分かっている。だが、まさか俺が引き続きの対策とアゼリア行きの準備に追われている最中に、王家と廷臣らがジェニスとティーナの婚姻を強行する暴挙に出ようとは……っ」
 苦々しく漏らす俺を、ザイオンがヤレヤレといった様子で見上げる。