拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

『みゅーっ!』
 おやつの件で、即座にラーラが反応する。まるで私の言葉が分かっているみたいな態度に、自然と笑みがこぼれた。
 ちなみに、私はただ街を歩いているだけで声が出なくなったり、表情が固まったりということはない。商店で買い物ややり取りを楽しむことだってできる。
 それらの症状はきまってパーティや茶会といった社交の場に赴いた時、自宅や他所でも貴族階級の人たちに応対しようとすると現れる。症状が出現する場面は、実は比較的限定されているのだ。
 ……でも、考えてみると不思議よね。
 私は社交の場に出ることが怖い。厳密には、そこに集う人たちを私の発言や行動で不愉快にさせてしまうことが、恐ろしくて堪らない。そんな恐怖心や不安感が、声と表情を凍らせてしまうのだが。
 けれど、これまで街で──少なくとも、貴族の往来がほとんどない東地区で、僅かながらにいる顔見知りや商店主たちに対してコミュニケーションを躊躇したことはない。私にとって、彼らは恐怖の対象にならないのだ。