拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 己の早合点に肩を落とすザイオンを横目に、俺と同様ザイオンにとっても、ラーラが掛け替えのない存在になっていることを察するのだった。

◇◇◇

 ここ十日ほど連日で、新聞の見出しは恐ろしい熱病の蔓延を伝えていた。記事によれば王都での感染は限定的に抑え込めているようだが、街に漂う空気はどんよりと重い。
 そんなある日の夕刻。孤児院から帰宅した私は、屋敷の応接間で王城からの使者を相手に目を丸くして叫んでいた。
「お待ちください! これにはきっと、なにか誤解がございます!」
 三週間前にお父様の議員仲間を見送った小さな成功体験。あの出来事を皮切りに、私の緘黙症状は日に日に改善されていた。
 周囲の反応を怖れずに踏み出せるようになった、その原動力はファルザード様としたあの日の会話だ。『そのままの自分を誇ったらいい』という彼の言葉が私の心を奮い立たせている。
 お姉様のような、機知に富んだ応対にはほど遠い。けれど、最近では来客に最低限の挨拶とカーテシーが熟せるようになっていた。