拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 回廊を抜け離宮の玄関を出た俺は、前庭に立ち寄り、園芸用として庭の隅に設えられているポンプ式の井戸で手を洗い口を濯ぐ。
 幾度かうがいを繰り返していると、外で待っていたザイオンが気づいて歩み寄ってきた。
『ニャー《意外とゆっくりだったな》』
 さっきは病床の叔父の手前、ああ答えた。しかし、現実問題叔父にジェニスを抑えるだけの力はないだろう。そうなれば、面倒事は必至。
 やはり、ここは俺が王都を出るべき。
「ザイオン、しばらく王都を離れるぞ」
 手巾で手と口もとを拭いながら、ザイオンに告げた。
『ニャー《ほう。すると行き先は、先だってヘサームと話題にしていたアゼリアか?》』
「ああ」
 もともと王国北部の町、アゼリアをはじめとする病の進行が深刻な地域に出向き、俺が直接対策指揮を執ることを検討していた。