侍従の案内で入室した俺を見るや、叔父が気弱に訴えてくる。しかし言葉は最後まで続かず、苦しげに咳込んでしまう。
 俺への連絡がこんなにも遅かった理由……やはり、そうだったか。王都での感染はいまだ限定的とされていたが、まさか国王たる叔父が罹患していようとは。
「陛下、無理に話そうとなさらず」
 俺は叔父の枕辺に大股で歩み寄って背中をさすり、手ずから吸い飲みを口にあてがって飲ませる。
 その際に触れた叔父の体は、燃え立つように熱い。
 ……ひどい熱だ。それに食欲不振も著しいのだろう。比較的肉付きがよかったはずなのに、支えた背には骨が浮き、短期間でずいぶんと憔悴していた。
 それらはどれも此度の熱病の代表的な症状だった。
 叔父が喉を鳴らしたのを確認すると飲みこぼしで濡れた口もとを手巾で拭い、引き寄せたクッションをヘッドボードと背中の間に積み重ねて楽な体勢で寄りかからせる。関節や筋肉に痛みがあるようで、叔父は些細な動きひとつにも低く呻いて表情を歪ませていた。