俺の周囲の状況が一変したのは翌週のことだった。
 我が国の一大貿易港であるブルマンに帰港した商船員が発熱、頭痛、関節と喉の痛みを訴えたのが最初の報告。そこからブルマン港の近郊のみならず、王国中でこの症状の熱病が同時多発的に発生したのだ。当然、その対策が急務となり、俺は一気に多忙を極めた。
 珍しいことに、これまでであれば真っ先に叔父の方から使者を介して俺に情報収集と調査、対策の指針までを求めてくるところ、今回は音沙汰がなかった。もちろん叔父の要求如何にかかわらず、俺は感染拡大の報告を受けると同時に独自の調査を進めていたが。
 叔父からの呼び出しがあったのは、感染拡大の一報から数えて実に十日目のことだった。
 そうして向かった離宮の一室で俺を出迎えたのは、寝台の上で半身を起こしているのがやっとの弱り切った叔父と、そんな状態の叔父に浮足立つ廷臣たちだった。
「ファルザードよ。かような病魔に襲われてしまっては、我が国はもう終わりだ。儂はもう、どうしたらいいのか……ゲホッ、ゴホッ」