拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 車内のお姉様に指摘され、私とお母様は慌てて手をほどく。
 お母様がひらりと乗り込むと、お姉様からの合図を受けて御者がゆっくりと馬車を走り出させる。
「いってくるわね、ティーナ! それから、どんな道でもお母様はあなたの選択を応援するわよ!」
 お母様は元来、朗らかで気さくな質だ。手を振って見送る私に、お母様は車窓を開け放って満面の笑みで告げた。
 押し潰されそうな内心をひた隠し、私もそれに笑顔で答える。
「ありがとう。お母様、お姉様、いってらっしゃい」
 そうして馬車が通りの向こうに消えた瞬間。ここまで意地で保っていた笑顔は崩れ、勝手にぽろりと涙がこぼれた。
 あまりの不甲斐なさに、消え入りたい思いがした。
 その時。
『みゅー』
 足元から聞こえてきた鳴き声にハッとして見下ろすと。
「……ラーラ」
 部屋にいたはずなのに、いつの間にいたのだろう。ラーラがまるで慰めるように、私の足にすり寄って尻尾を絡めてくる。
 私は屈んで小さな体を掬い上げ、キュッと胸に抱きしめた。