拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 ここで周囲の目を引き合いに出すとは、実にうまい手だ。予想外の機転で対応した彼女を、驚きをもって見つめる。
「寛大なお心に感謝します」
 ティーナが胸前に手を当てて、しずしずと頭を下げる。ジェニスはグッと唇を噛みしめて、彼女とその背に庇われたミリアを苛立たしげに見下ろしていた。
「今日は興が削がれた。私はもう帰る」
 ジェニスはぶっきらぼうに言い放つ。
「はい。お気をつけて」
 耳にして、ティーナは明らかにホッとした様子で答えた。すると、それを見たジェニスがなにを思ったか、突然ティーナの手をグッと掴んで引いた。
「あっ!?」
 ティーナはバランスを崩して前傾するも、足を踏ん張ってなんとか体勢を立て直す。
 その隙にジェニスは嫋やかなティーナの手を己の口もとまで寄せてきて、これ見よがしに指先に口付けた。
 っ!! 目にした瞬間、カッと頭に血が上る。血管が焼き切れそうなほどの激しい怒りと嫌悪感が湧いた。
「あ奴、俺のティーナになにをしてくれる……!」