拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 ザイオンの一連の動作を興味深そうに見つめながら、ヘサームが何事か小さく呟く。
「ティーナ嬢が飼われているというネコも、あるいは……」
「なにか言ったか?」
「いえ。仕方ないので任されましょうと、そう申し上げたのですよ」
 ヘサームは訳知りにフッと微笑んでこう答え、俺がデスクに残した書類束に手を伸ばす。
 ……やはり、食えない男だ。
「いってくる」
「いってらっしゃいませ」
 書斎を出て扉を閉めたところで、自然とため息が漏れた。
『ニャー《あ奴、なかなか面白い男よの》』
 足もとでザイオンが、尻尾を揺らしながら愉快そうに口にした。
「たしかに、底の知れない男ではあるな」
『ニャー《一見では冷静沈着と思われがちだが、あれの本質は荒ぶる獅子だ。覇王の相も持っておる》』
「……覇王?」
 武力や策略で天下を取る者を指す言葉だ。それが意味するところは、はたして──。
『ニャー《なに、そなたの敵にはならんさ。獅子もまたネコ科だからな。手を掛ければ、懐きもする》』