拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

「マリエンヌの言う通りね。ティーナに強要するつもりはなかったのだけれど、貴族令嬢と生まれたからにはいつかは社交界で家格のあった貴公子に見初められてお嫁に……ついついそんな古い考えに固着してしまって。でも、そうね。今はもうそんな時代じゃないわね。なにより、ティーナの思いを無視して苦痛な場所に引っ張り出そうだなんて、どうかしていたわ」
 内心の動揺激しい私とは対照的に、お母様はお姉様の言葉にすっかり納得した様子だった。
「ごめんなさい、ティーナ。もう、二度とあなたに社交を無理強いしないわ」
 お母様は私に向き直り、体の前でギュッと握っていた私の両手を上から優しく撫でた。
「いいえ、お母様が謝ることはなにも! むしろ……」
 ……むしろ、至らない娘でごめんなさい。これを告げれば、きっとお母様が胸を痛める。
 続く言葉はあえてのみ込み、お母様の手をそっと握り返した。
「ふたりとも、そろそろ。これ以上は遅れてしまうわ」
「あらあら、いけない。そうだったわね」