拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

「いったいなにがまずいのです?」
「彼女を囲い込むために、これから奴がどんな手段に出てくるか分からんぞ」
 今後を憂慮する俺を、ヘサームがジッと見つめていた。その眼差しは俺という人間の観察を楽しんでいるふうでもあり、とても主に仕える従順な部下のそれではない。
 無礼と言えばそうなのだが、それを差し引いても優秀な男ゆえ手放すに手放せず、もう十二年の付き合いになる。裏路地で偶然目に入った褐色の肌に銀髪という見るからに異国出の特徴を持つ痩せっぽちの少年を哀れに思い、側仕えに取り立てたのはほんの気まぐれだったのだがな。化けたものだ。
 なんにせよ、この男の少々礼を欠く言動を、今さら窘めるまでもない。
「ヘサーム、ジェニスの動向をこれまで以上に注視してくれ。もし、なにか動きがあればすぐに俺に知らせろ」
「それは構いませんが。……我が主もまた、ティーナ嬢にいたく執心のご様子。王家の男たちを次々篭絡していく件のティーナ嬢には、さて、どんな魅力が詰まっているのでしょうね?」