拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 従弟であり、現王太子のジェニスとは、十三年前の〝あの日〟以来一度も顔を合わせていなかった。当時のジェニスは賊の襲撃のショックで気を失っており、俺の引き起こした惨劇を覚えていない。彼自身も周囲に対し、言葉少なに『分からない。覚えていない』と伝えている。
 だから顔を合わせたところでなにがあろうはずもないのだが、なんとなく気が引けていた。そうして叔父から疎まれているのをこれ幸いと交流を絶ち、気づけば十三年が経っていた。
 俺は〝あの日〟たまたま共に過ごしていたジェニスを年長者として当然の使命感から庇ったが、本音を言えばあまりいい思い出のある相手ではなかった。現王妃で、当時王弟妃だった母親が甘やかし放題だったために、ジェニスは五歳にしてやたらと気位が高く、傍若無人な振る舞いで周囲を困らせてばかりいた。
 長じて最低限の体裁を保つことは覚えたようだが、その本質は変わっていない。俺が持つ情報筋から聞こえてくる奴の評判も散々なものばかりだった。