拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています

 動揺する俺を余所に、ヘサームは右目に装着した銀枠のモノクルの位置を直しながら淡々と返す。
「なぜそんな事態になっている!? ふたりにまるで接点が見当たらんぞ」
 そもそも、社交界デビューしていないティーナは、貴族社会で満足に認知すらされていない状況だった。当然、ジェニスとも面識はなかったはず。
 それがどうして急にジェニスの妃候補などということに……。
「なんでも、ジェニス殿下は先だっての孤児院慰問の際、たまたま院を訪れていたティーナ嬢と会い、大層気に入られたのだとか」
「っ! ふたりが会ったのか!?」
 これは、まずい事態になったかもしれん。
 俺には到底及ばないとはいえ、ジェニスの魔力は王族の中でもかなり高いのだ。もしかすると、ティーナが精霊のいとし子である可能性に気づいたか!?
 いや、一概にそうとは言い切れない。緘黙の症状があるとはいえ、その場面は限定的だとも聞いているし、なによりティーナはあの美貌だ。