ファルザード様は私のことを淑女だとそう言ってくれたけれど、恋の相手となれば話は別だ。お姉様のことを抜きにしても、私では彼に釣り合わない。
 そもそも、貴族青年との結婚が難しい事情を抱えている私に、公爵であり先代王の直系子息でもあるファルザード様のお相手など務まる訳がないのだ。
 彼への恋心を自覚するのと同時に決まった失恋に、心が狂おしく軋みをあげた。
 その時、腕に下げたバスケットからラーラの声が聞こえてくる。
『みゅー』
 不思議と『元気出して』と、そう言っているように感じた。
「励ましてくれているの? ありがとうね、ラーラ」
 そっと頭を撫でたら、ラーラはスリスリと私の手に顔をすり寄せた。温かく柔らかな感触に、ちょっぴり心が慰められた。