ダークチョコレート


「うん?」
「ダークチョコレート、持ち歩いてるの?」
「え、持ってたことないけど。いつの話?」

これは昨日買った、と同じ説明を二度してくれる。
それは知ってる、と頷く。

「私がまだ営業にいた時、よくチョコくれたじゃないですか」
「あー、うん。あげた」

覚えているらしい。

「あれは、あげようと思って持ってた」
「……私に?」
「他に誰がいるんだよ」
「え、どうして?」

どうして、と清水さんが言葉を繰り返す。

私は答えを待った。

「欲しかったから?」

疑問形で返ってきた文章に、またしても疑問を投げ返す。