優しく笑うので、口の中の苦味を忘れそうになった。
「じゃあ戻ろう」
「清水さん、飲み物買わないんですか?」
自販機の前へ来たのに、何も買っていないことに気付き、私は問うた。
清水さんが甘いものを好きなのは一緒に働いたことのある人なら誰でも知っていた。
「いい、花葉のこと見つけたから」
それが答えになっているのかいないのか、私にはよく分からないまま、今日まできてしまった。
考えてみれば、どうして清水さんはあの時、ダークチョコレートを持っていたんだろう。
他の誰かにあげる為だったのを、私にあげちゃったのかな……。



