苦いものを食べると、自分の形を取り戻せる気がする。
無糖のコーヒーを買おうとしたら売り切れの文字。はー、と息を吐いて、コンビニへ行こうかと頭の片隅で考えていた。
「うわ、びびった。戻ってたんか」
足音なく現れた清水さんに、私の方が驚いた。
「……お疲れ様です」
「お疲れ。さぼり?」
「苦いコーヒー飲みたいんですけど、無くて」
「本当だ」
清水さんが私がいつも押しているコーヒーの場所を見る。
「加糖コーヒーから砂糖抜くか」
「そんな方法があるんですか?」
「いやないよ」
ボケを拾ってくれよ、と清水さんが苦笑した。



