「それ、くれるんじゃないの?」
差し出した本人も目を丸くしながら尋ねてくる。示されたのは、私の持つチョコレート。
「いえ、これは私が食べる用で」
「え、チョコは?」
「無いです」
「え」
「無いです」
2回言った。
というか、チョコレートなら自分の手に持っているのに。
なんでこんなに苛々してるんだろう。
「欲しかった」
清水さんが残念そうに言うので、ぷちんと何かが切れた。
「あるじゃないですか、いっぱい」
笑えないのに、口元には笑みが浮かんだ。
そうして自分を守ってきた。
「別に私からじゃなくても良いじゃないですか」



