ダークチョコレート


「うん」

返答する声には聞き覚えがあった。

「清水さんのことが好きで……」

ぐらりと世界が揺れる。

反転する前に、踵を返した。


自分の席に戻り、上着を取った。隣の席の同僚に「コンビニに出てきます」と声をかけて、エレベーターへ乗った。

受付前に、もちろん野々宮さんの姿は無い。

外へ出ると、2月の外気は冷たかった。

ぴゅう、と首元を撫ぜる風に首を竦めて、徒歩二分もないコンビニへと歩を進める。昼休憩時なので、数名の同僚とすれ違う。

もちろんそこに清水さんの姿も無く。

お菓子コーナーでカカオ高めのチョコレートを手に取り、お会計を終える。