「ははうえ、あっちにいっぱいひとがあつまってる」
「どうやら傀儡師の見世物が始まるようですね。見に行ってみますか?」
「いく! ははうえ、はやくはやく!」
紫紺が私を引っ張って連れていってくれます。
私たちの後ろを青藍を抱っこした黒緋がついてきてくれました。
ちょっとした広場のような空き地に行くと、すでにそこは大勢の人が集まっています。
どうやら有名な人気一座のようですね。楽しみです。
「紫紺、見えますか?」
「う~ん、みえない~!」
ぴょんぴょん跳ねている紫紺にクスリと笑ってしまう。
無邪気な姿が可愛いですね。でも見えないままなのは可哀想、どこか見やすい場所が……。
「紫紺、肩車してやる。登ってこい」
「やったー! ちちうえ、ありがとう」
黒緋が片腕を差し出すと、紫紺はひょいひょいと身軽に黒緋をよじ登って肩に乗っかりました。三歳とは思えぬ身体能力なのはさすがですね。
しかも黒緋の背丈は一般的な殿方よりも頭一つ分は高いので、肩車をされた紫紺はよく見えるようですね。
でも青藍を片腕で抱っこしたまま紫紺を肩車しているので少し申し訳ないです。
「黒緋様、ありがとうございます。青藍は私が抱っこしましょうか」
「大丈夫だ、子ども二人くらい問題ない。それに青藍もここからの方がよく見えるだろ。お前もそこの岩にあがったらどうだ。踏み台に丁度いい」
「ふふふ、ありがとうございます」
お言葉に甘えて足元にあった岩にあがりました。
目線が高くなって視界が広がります。黒緋の端正な顔が近くなって、なんだか少し照れてしまう。
目を伏せると黒緋は小さく笑って「支えにしていいぞ」と肩に手を置かせてくれました。
こうして黒緋は青藍を抱っこし、紫紺を肩車し、私に肩を貸してくれて。でも彼はよろけるどころか危うげなく立っています。
「見えるか?」
「はい、とても」
「よかった。もしもの時は担ごうと思っていた」
「戯言を」
「本気だぞ」
「それはまた。ふふふ、ならば丁度足元にあった岩に感謝しなければ。もしこんな所で担がれては、恥ずかしくてずっと顔を覆ってしまいます」
そう言って袖で顔を覆ってみせると黒緋がおかしそうに笑いました。
「それは困るな。お前の顔が見えない」
「惜しいと思ってくださるのですね」
袖から目だけを覗かせる。
近い距離で目が合って、互いにクスクス笑いあいます。
「どの顔も見逃したくないからな」
「私も同じ気持ちです」
ひそやかに言葉を交わしあいました。
たったこれだけの他愛ない会話なのに胸が高鳴って心が弾むよう。
今、黒緋に愛されているのは私です。それを実感できることが幸せでした。
「どうやら傀儡師の見世物が始まるようですね。見に行ってみますか?」
「いく! ははうえ、はやくはやく!」
紫紺が私を引っ張って連れていってくれます。
私たちの後ろを青藍を抱っこした黒緋がついてきてくれました。
ちょっとした広場のような空き地に行くと、すでにそこは大勢の人が集まっています。
どうやら有名な人気一座のようですね。楽しみです。
「紫紺、見えますか?」
「う~ん、みえない~!」
ぴょんぴょん跳ねている紫紺にクスリと笑ってしまう。
無邪気な姿が可愛いですね。でも見えないままなのは可哀想、どこか見やすい場所が……。
「紫紺、肩車してやる。登ってこい」
「やったー! ちちうえ、ありがとう」
黒緋が片腕を差し出すと、紫紺はひょいひょいと身軽に黒緋をよじ登って肩に乗っかりました。三歳とは思えぬ身体能力なのはさすがですね。
しかも黒緋の背丈は一般的な殿方よりも頭一つ分は高いので、肩車をされた紫紺はよく見えるようですね。
でも青藍を片腕で抱っこしたまま紫紺を肩車しているので少し申し訳ないです。
「黒緋様、ありがとうございます。青藍は私が抱っこしましょうか」
「大丈夫だ、子ども二人くらい問題ない。それに青藍もここからの方がよく見えるだろ。お前もそこの岩にあがったらどうだ。踏み台に丁度いい」
「ふふふ、ありがとうございます」
お言葉に甘えて足元にあった岩にあがりました。
目線が高くなって視界が広がります。黒緋の端正な顔が近くなって、なんだか少し照れてしまう。
目を伏せると黒緋は小さく笑って「支えにしていいぞ」と肩に手を置かせてくれました。
こうして黒緋は青藍を抱っこし、紫紺を肩車し、私に肩を貸してくれて。でも彼はよろけるどころか危うげなく立っています。
「見えるか?」
「はい、とても」
「よかった。もしもの時は担ごうと思っていた」
「戯言を」
「本気だぞ」
「それはまた。ふふふ、ならば丁度足元にあった岩に感謝しなければ。もしこんな所で担がれては、恥ずかしくてずっと顔を覆ってしまいます」
そう言って袖で顔を覆ってみせると黒緋がおかしそうに笑いました。
「それは困るな。お前の顔が見えない」
「惜しいと思ってくださるのですね」
袖から目だけを覗かせる。
近い距離で目が合って、互いにクスクス笑いあいます。
「どの顔も見逃したくないからな」
「私も同じ気持ちです」
ひそやかに言葉を交わしあいました。
たったこれだけの他愛ない会話なのに胸が高鳴って心が弾むよう。
今、黒緋に愛されているのは私です。それを実感できることが幸せでした。

