そんなわけないだろ。と、私は心の中でツッコミを入れた。

学校に普段からレターセットを持ってくる人なんているわけないし、最初から私がやってくれることを想定して用意していたのだ。

「なんて書けばいいのかな…手紙書くとか小学生ぶりで忘れちゃった」独り言のように百合香が呟く。

どうやら、百合香はこのまま押し通そうとしているらしい。

私は呆れを含んだ声でアドバイスをした。

「最初は、るきさんへから始めたらいいんじゃない?」

「あっ、そうだね!ありがと!」


色んなレターセットの中から白色のシンプルな手紙をとり出し、ペンで文字を書きはじめた。

人が何かを書く姿は、不思議と見入ってしまう。

手紙の最初に書かれたのは、【月煌さんへ】。

へぇ、るきって「月」に「煌」って書くんだ。変わった名前。なんて思いながら達者な字を見つめる。


最近、学校で先生や生徒が突然姿を消して困っています。助けてください。


そして、手紙の最後には

────神代あかり。