淡い月を愛していたい

「私、何の役にも立ってない…」

百合香と晃生を助けるために、ここに来たのに。
自分の不甲斐なさを痛感し、悔しさで膝を抱えて俯く。


その直後、首に冷たい何かに触れられた感覚があった。

粘土で作られた手のような感触に、ぞっと鳥肌が立つ。

嫌なものを感じて、逃れようとした時にはもう遅かった。首が何者かに絞められて、そのまま体が宙に浮いた。


その時、手から離れた懐中電灯がガタン、と音を立てて落ちる。


「ぐっ…ゔ…はぁっ」

首を絞め付ける手を引き剥がそうと、手に爪を立てたり、首と手の間に指を入れてみようとするが、力任せに絞められていて引き剥がすことができない。

痛い。
苦しい。

必死の思いで上を見上げると、瞳孔が開き血を噴いたような真っ赤な目と目が合った。

壁男って壁の中しか移動できないんじゃなかったの…!?なんで天井から…!

月煌を呼ぶために声を上げようとするが、それを許さないとでも言うように、首をギリギリと絞め上げられる。

肺は新鮮な酸素を求めて、息を吸おうとするが気道が完全に塞がれていて叶わなかった。


タダでやられてたまるか…!


私は薄れていく意識の中、最後の抵抗で、スカートのポケットに手を伸ばした。