百合香がもしかしたらこの中にいるかもしれない。ほんの少しの淡い期待を抱いて、音楽室の引き戸を引こうとするが
「あれ…開かない…」
少し開いたところで、ガンッと何かに当たる音がして、扉が動かなくなった。
どうやら何か固いものが、扉の向こう側に置かれていてつっかえているらしい。
「どうした?」いつまで経っても開かない扉を不思議に思った月煌が訊ねてきた。
「何かにつっかえて扉が開かないの、どうしよう…!」
「あかり、扉から離れてくれ」
「何するの?」
「扉を壊す」
「え!?ちょっと待って…!」
月煌に、私の声は聞こえていないらしい。扉から少し離れ、勢いをつけたあと、扉を蹴り飛ばした。
決して、脆くはない木の扉は、大きな音を立てて粉々になる。
私は唖然として、もうなにも言えなかった。
木の扉が一瞬で粉々になるなんて、衝撃以外のなにものでもない。
私は右足を踏み出そうとして、躊躇した。
扉はもう壊れたのだから、中に入ることができる。でも、私の足は前へ進むどころかじりじりと後ずさりをする。
音楽室の中は、電気がついていないから外からでは中の様子がわからない
だから、その中に光を入れさえしなければ人間の私ではなにも見えない。
私は、意図して懐中電灯を下に向けた。
「入らないのか?」月煌のその声で、私はハッとする。
今さら、怖がるな私。この先に百合香がいるかも知れないんだから行かなきゃ、絶対助けるって決めたじゃない。
私は、壊れた扉の破片を踏みながら音楽室に入った。
それと同時に、下に向けていた懐中電灯を前に向ける。
そこに広がっていたのは異様な光景だった。
床に楽器や楽譜、譜面台、パイプ椅子が散乱していて、まるで慌ててその場から離れようとしていたみたいだった。
音楽室の肖像画たちは床に落ち、割れた額縁のガラスが無造作に散らばっていた。
そして、壁にはホルンと赤色の上履きが埋まっている。
〝「わたしホルン担当になったの!」〟
嬉しそうな、友人の話し声が頭に響く。百合香は吹奏楽部でホルンを担当していて、上履きは赤色だった。
「あれ…開かない…」
少し開いたところで、ガンッと何かに当たる音がして、扉が動かなくなった。
どうやら何か固いものが、扉の向こう側に置かれていてつっかえているらしい。
「どうした?」いつまで経っても開かない扉を不思議に思った月煌が訊ねてきた。
「何かにつっかえて扉が開かないの、どうしよう…!」
「あかり、扉から離れてくれ」
「何するの?」
「扉を壊す」
「え!?ちょっと待って…!」
月煌に、私の声は聞こえていないらしい。扉から少し離れ、勢いをつけたあと、扉を蹴り飛ばした。
決して、脆くはない木の扉は、大きな音を立てて粉々になる。
私は唖然として、もうなにも言えなかった。
木の扉が一瞬で粉々になるなんて、衝撃以外のなにものでもない。
私は右足を踏み出そうとして、躊躇した。
扉はもう壊れたのだから、中に入ることができる。でも、私の足は前へ進むどころかじりじりと後ずさりをする。
音楽室の中は、電気がついていないから外からでは中の様子がわからない
だから、その中に光を入れさえしなければ人間の私ではなにも見えない。
私は、意図して懐中電灯を下に向けた。
「入らないのか?」月煌のその声で、私はハッとする。
今さら、怖がるな私。この先に百合香がいるかも知れないんだから行かなきゃ、絶対助けるって決めたじゃない。
私は、壊れた扉の破片を踏みながら音楽室に入った。
それと同時に、下に向けていた懐中電灯を前に向ける。
そこに広がっていたのは異様な光景だった。
床に楽器や楽譜、譜面台、パイプ椅子が散乱していて、まるで慌ててその場から離れようとしていたみたいだった。
音楽室の肖像画たちは床に落ち、割れた額縁のガラスが無造作に散らばっていた。
そして、壁にはホルンと赤色の上履きが埋まっている。
〝「わたしホルン担当になったの!」〟
嬉しそうな、友人の話し声が頭に響く。百合香は吹奏楽部でホルンを担当していて、上履きは赤色だった。
