淡い月を愛していたい

「ここで妖気が途切れている」月煌は保健室と職員室の間で足を止めて、壁に手を当てながら「やはり、変だ」と呟いた。

「何が変なの?」

「妖気が残っているのが壁だけなんだ」

妖気もイマイチよく分かってない私にそんなこと言われてもなぁ。

「えーっと、それってつまりどういうこと…?」理解が追いつかない私に月煌は状況を説明してくれた。

「妖気は、妖怪が通った場所にできる妖怪の足跡みたいなものなんだ」

それが、壁だけにしかないという事はその妖怪は壁を歩いているか。あるいは、壁の中を……


月煌が何かを言いかけた時、遠くの暗闇の中から赤い炎がこちらに向かってくるのが見えた。

「行こう、陽火が何かを見つけたみたいだ」

「うん」


私と月煌は、陽火の後を走って追いかけ、上の階へと続く階段を駆け上がり、廊下を左へ曲がった。

陽火は、二階のいちばん端にある音楽室の前で止まっている。

「音楽室…?」と小さく呟いた時だった。頭の中で何かがはじけたような感覚が起こる。

そうか、百合香は吹奏楽部だから音楽室にいたはず!