淡い月を愛していたい

「そうか」月煌は私が目的を果たすまで帰らないことを理解したのか
私から、ふっと目を逸らし、手につけた鈴をシャランシャランと鳴らしながら校舎の中へと入っていった。

その後を、陽火と陰火がふよふよと揺らしながらついていく。

私も置いていかれないように、急いで手に持っていた懐中電灯をつけ、後を追った。


「わっ…」

校舎の中に足を踏み入れると、背筋をぞっと何かが伝ってくる気味の悪さを感じて、寒気がした。

だが、今はそれを気にしている時間も余裕もない。
早く百合香と晃生を見つけ出さないと


私は、ぱたぱたと急ぎ足で先を歩いていた月煌に追いつくと
「どう?妖怪の気配とか感じる?」と話しかける。

「いや、妖気の残穢が至るところに残っているだけで妖怪の気配は感じない」

「とりあえず、妖気が一番強く残っている場所を探そう。そこに何かしらの手掛かりがあるはずだ」月煌の提案に私は頷いた。


「陽火、僕たちは下の階を調べるから何か手掛かりがないか上の階を調べて来てくれ」

陽火は、頷くように赤い炎を揺らしたあと階段がある方へと向かっていった。


月煌は、妖気を辿っているのか指先で壁を軽くなぞりながら歩き出す。

私も百合香と晃生がいないか、懐中電灯で辺りを照らしながら確認していく。

「百合香、晃生……」

友人の名を呼ぶそのか細い声は、夜の校舎へと消えていく。
月煌は何も言わない。ただひたすらに妖気を辿っていった。

─────更衣室の前
─────事務室の前
─────校長室の前
─────放送室の前

そして保健室の前を通り過ぎ、職員室の近くに来た時だった。