淡い月を愛していたい

小林先生の教科書を読む声以外聞こえなかった教室に、クラスメイトの笑い声が響く。


ああ、やってしまった。羞恥心で顔に熱が集まるのがわかった。


そんな私の背中を後ろから、慰めるように叩き、声をかけてきたのは友達の(つじ)百合香(ゆりか)だった。

「…あかり、ドンマイ。」

そう言った百合香の声と体は、笑いを堪えぷるぷると小さく震えている。


いつも、怒られてるのは百合香のくせに。私は心の中で悪態をついた。



はいはい、静かに!気持ちを切り替えてください。先生は手を叩いてみんなの意識を自分に向けさせる。

「えーっと、どこまで読んだんだっけ。はあ、もう先生疲れて忘れちゃった」

ため息混じりに話す先生に、それ、私のせいですよね。すみません。と罪悪感から胸の中で謝った。


「私が喰らったのはってとこまで読みましたよ」とクラスの学級委員が教える。

「あー、そうだったわね。ありがとう」