淡い月を愛していたい

「どうなっても僕は知らないぞ、一度は忠告したからな」

目を野猫のように鋭くして睨んでくる月煌に「ちゃんと分かってるよ!」と語気を荒げて、校門の柵部分に足をかけた。

「スカートの中見ないでね!」

「見ない」

足と腕に力を入れて登ろうとするが、疲れ切った足に上手く力を入れることができず、柵部分に足をかけたまま数秒静止した。

「……校門登れないから下から押してほしい」

月煌は肺の底から呆れたように息を吐いた。


   *・*


私は月煌の力を借りながら、何とか校門を越えて学校の敷地内に入った。

ふと思い出したのだが、校舎に入ることができるドアや窓には全て鍵がかかっているはずだ。

「月煌、たぶん全部に鍵かかってるよ。どうやって入る?」

「一度開いてるところがないか確かめて、なかったら窓を割って入る」

犯罪じゃん。これバレたら私、停学かさいあく退学になるんじゃないの!?
で、でもこれは百合香と晃生を助けるためだから仕方ないよね!

月煌は、生徒玄関のガラス扉に手をかけ、ゆっくりとした動きで扉を開ける。

そう、いとも簡単にガラス扉は開いてしまったのだ。

「あ〜、良かった!開いてた」
これで退学にならなくて済む!と能天気に喜ぶ私とは違い

月煌は扉を注意深く見たあと、何かを感じ取ったかのように後ろを振り向いた。