「……月煌いる?」

「なんだ?」

後ろから急に声をかけられて私の心臓はドキリと跳ね、思わず「うわっ!」と頓狂な声をあげる。

「ビックリするから後ろから声かけるのやめてよ!」

「驚かせてしまってすまない、それで何か用か?」


「私の友達と幼馴染みが行方不明なの…っ!私にできることなら何でもします!お金だっていくらでも用意します!」

「だから、お願い…っ百合香と晃生を助けてください……!」


必死だった。百合香と晃生を助けたい、その一心で頭を下げる。徐々にスカートを掴む手に力が入って、皺ができる。

小刻みに震える唇を押さえつけるようにして、じっとうつむき、唇を噛み締めた。


「報酬は必要ない、その代わり君の学校まで案内してくれ」

私は下げていた頭を上げ、眼尻に少し溜まった涙を拭いながらお礼を言った。


すると彼は伏し目がちに「別にいいよ」と私から視線を逸らし、懐から取り出したにぶく光る赤の和玉の耳飾りをつけた。

その後も、何かを呟いたようだったが私は上手く聞き取ることができなかった。


「来い、陽火陰火」

月煌が、灯籠に向かってそう言うとゆらゆらと揺らめいていた炎がまるで意思があるかのように動き始める。