淡い月を愛していたい

「今日学校どうだった?」

「んー、別にいつも通りだったよ」玄関に座って靴を脱ぎながら答える。

「…晃生くん今日学校来てた?」

「ううん、来てなかったけど」

私がそう言うとお母さんは「あぁ、やっぱりか」とでも言うような表情になる。

その表情が気になった私は「なんで?」と訊ねてみた。


「今日の朝、晃生くんのお母さんから連絡があってね。晃生くん昨日の夕方から家に帰って来てないって」

「ほら、最近行方不明になってる子が多いでしょう?何か事件にでも巻き込まれたのかしら、心配よねぇ」

お母さんが眉間に皺を寄せ、心配そうな面持ちで右の頬に手を当てる。


私は、お母さんの言葉に何と返していいのか分からず黙ってしまった。

それを察したのか、お母さんはそれ以上晃生については触れず、今晩の晩御飯の話をし始めた。

「今日の夜ご飯あかりの好きなハンバーグだよ」

「え、今日ハンバーグなの!?やったー!」

私も先程までの空気を誤魔化すように、いつもより大袈裟に喜ぶ素振りをみせる。

「ふふ、早く鞄を置いてらっしゃい」

「はーい」私は返事をして鞄を置くために、自室へ向かった。


机の上に鞄を置くと、雑にいれていたせいか鞄から出てきた手紙がひらり、と宙を舞って床に落ちる。

その手紙を見て、夏から切り離されたかのように色の白い髪と肌に、水晶のように綺麗な瞳を持つ青年を思い浮かべた。

「綺麗な目だったな」