「誰も、いない……?」

そこには誰もいなかった。
辺りを見回したが、人の姿は見えない。気配も感じたし、鈴が鳴る音だって聞こえたのに。

不気味な沈黙が私を包んでいた。

きっと気のせいだ…不安になった私はそう自分に言い聞かせて、その場を走り去ろうと前へ向き直った時だった。

そのまま私の前にあった壁のようなものに勢いよく突っ込み、鼻をぶつけてしまった。

「いったぁ…私の鼻が…」

じんじんと痛む鼻を押さえながら、痛みに耐えるために固く瞼を閉じた。

サメや熊は鼻が急所と言われているらしいが、ぜったい人間も鼻が急所だ。

ん?待てよ。さっき私が突っ込んだの壁にしては柔らかすぎたし、何か一瞬いい匂いがした気がするし

まず道に壁なんて


「神代あかねって君か?」