淡い月を愛していたい

いつもこの時間帯は、夏の過酷な日射しのせいで少し動くだけでもとめどなく汗が溢れてくるのだが

今日は、雲が太陽を覆い隠しているためいつもよりは暑さを感じない。

いつもこうなら過ごしやすいのに、そんなことを考えながら静かな街を歩いていた。


すると、静けさの中から微かに鈴の音が聞こえてくる。

鈴なんて珍しい。昔おばあちゃんの家に青とかピンクとか、いろんな色の鈴があったからよく貰ってたな。貰ってすぐに全部失くしたけどね。

昔の少し苦い思い出を思い出しただけで、鈴の音は特に気にとめていなかったのだが

「え……」

私は身体を凍りつかせた。

誰かが後ろにいるような気がしたあと、微かに聞こえるだけだったはずの鈴の音が、私のすぐ後ろから聞こえてきたからだ。

私は背後にいる者の正体を知るために、肩にかけていたスクールバックの持ち手を強く握り、一呼吸おいてから肩を大きく回して振り向いた。