淡い月を愛していたい

*・*


「はい、じゃあ授業を終わります。今日出した課題は次の授業までにやっておいてください」

先生が言い終えるとそれに続けて、鐘の音がスピーカーから聞こえてきた。


私は「う〜ん」と唸りながら、両腕を上げて身体を伸ばす。
さっきの授業で今日の授業は終わりだ。


生徒たちは、教科書やノートを片付け、教室を出始める。

その中には元気に帰宅する生徒もいれば、放課後の部活動に向かう生徒もいた。


「百合香、今日も部活?」後ろの席にいる百合香に話しかける。

「そうなんだよー、この間、夏休みの部活の計画表もらったんだけどさ。もう毎日部活ばっかり」

これじゃあ夏休み謳歌できないよ。あ〜、かっこいい彼氏欲しい〜!海でナンパとかされてみたい!

嘆く百合香に「ドンマイ」とだけ言っておいた。


「うぅ〜、あかりぃ」百合香は分かりやすい泣き真似をしながら、私に抱きついてきた。

そんな百合香の背を慰めるように優しく撫でる。

「百合香ならすぐ彼氏できるよ、可愛いし」

「うん知ってる、わたし可愛いからね。男たちが放っておくわけないよね!海なんて行ったらわたしのナイスボディで何人か悩殺させちゃうかも」

「うわぁ…自分で言っちゃうんだそれ」私は百合香の背から手を離し、距離をとった。

「え、やめて?離れないでよ。さっきのは流石に冗談だって」

「うん、だよね。百合香胸ちっちゃいからね男の人たち悩殺されないよ」

え、急に酷くない?あかりだってぺちゃんこじゃん。

百合香が私のふくよかとまでは行かないけれど、それなりにある胸を見ながら啖呵を切った。

いやいや、私ぜったい百合香よりもあるからね。私も負けじと言葉を返す。


私たちは数秒、自分と相手の胸を見比べ

「よし、もう言い合うのはやめておこう」
これ以上お互い虚しい思いをしなくても良いように提案した。

「そうだね、胸以外にも良いところなんて沢山あるし。世の中、大きさでは決まらないよね」

百合香も私と同意見だったらしい。

「じゃあ、部活頑張ってね百合香」

「ありがとう、また明日ね」

「うん、また明日」私が軽く手を振ると、百合香は大げさに手を振りかえしてくれた。なんだか犬みたい。


私は百合香と別れの挨拶を交わしたあと、帰路についた。